睡眠時無呼吸症候群の原因はさまざまですが、最も多い原因は肥満であり、ダイエットで治る可能性が高いです。
本記事は下記のような方におすすめです。
- 肥満を伴う睡眠時無呼吸症候群に悩んでいる
- 睡眠時無呼吸症候群に対するダイエットの有効性を知りたい
- ダイエットの具体的な目標や方法を知りたい
睡眠時無呼吸症候群は放置すれば命にかかわる病気を招く可能性もあるため、これを機に正しくダイエットして対策しましょう。
睡眠時無呼吸症候群におけるダイエットの必要性
小顎・巨舌・アデノイドなどの解剖学的な原因を除き、ほとんどの睡眠時無呼吸症候群の方にはダイエットが推奨されます。
肥満によって首回りの脂肪が増加すると、睡眠中に気道がより狭くなり、呼吸が止まりやすくなるためです。
米国の研究結果では、睡眠時無呼吸症候群の重症度は10%の体重増加で32%増加し、10%の体重減少で26%も減少しました。
そのため、肥満を伴う睡眠時無呼吸症候群の場合は症状改善のためにダイエットが推奨されます。
もしそのまま放置して症状が悪化すると、心筋梗塞や脳卒中など命にかかわる病気を発症する可能性もあるため、早期から適切に対策しましょう。
【参考】Weight Loss Is Integral to Obstructive Sleep Apnea Management. Ten-Year Follow-up in Sleep AHEAD
【参考】NIH-Weight Loss Is Integral to Obstructive Sleep Apnea Management. Ten-Year Follow-up in Sleep AHEAD
日本医師会-睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群はダイエットで治るか
睡眠時無呼吸症候群はダイエットで改善が期待できます。
ここではそのメカニズムや、ダイエットの効果を具体的に解説します。
【参考】日本呼吸器学会-睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020
日本医師会-睡眠時無呼吸症候群
日本内科学会雑誌-睡眠時無呼吸症候群(SAS)の疫学
山口県医師会-睡眠時無呼吸症候群
日本肥満症予防協会-肥満と睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群
眠時無呼吸症候群と肥満の関係
睡眠時無呼吸症候群とは、その名の通り睡眠中に気道が狭窄することで呼吸が弱くなる、もしくは一時的に完全に停止する病気です。
肥満の方は脂肪によってより気道が圧排されやすくなるため、睡眠時無呼吸症候群を発症しやすいです。
国内で実施された大規模研究では、睡眠時無呼吸症候群患者とそうでない患者のBMI(Body Mass Index)を比較し、それぞれ26.1±1.5kg/㎡、22.7±1.4kg/㎡と、明らかに睡眠時無呼吸症候群患者では肥満が多い結果でした。
肥満は睡眠時無呼吸症候群の最大の原因ですが、一方で、日本人の場合は肥満でなくても小顎・巨舌・アデノイドなどの解剖学的理由で発症しうる点には留意すべきです。
【参考】佐藤 誠:非肥満の閉塞性睡眠時無呼吸.第2章 診断.最新医学 別冊 診断と治療のABC睡眠時無呼吸症候群 119 : 137―144, 2017.
AHIの改善
睡眠時無呼吸症候群に対するダイエットでAHIの改善が期待できます。
AHI(Apnea Hypopnea Index:無呼吸・低呼吸指数)とは、睡眠1時間あたりに生じる10秒以上持続する無呼吸(Apnea)や低呼吸(Hypopnea)の合計回数のことです。
AHIの値によって睡眠時無呼吸症候群は下表のように重症度分類がなされています。
AHI(回/時間) | |
軽症 | 5以上15未満 |
中等症 | 15以上30未満 |
重症 | 30以上 |
【参考】日本呼吸器学会-睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020をもとに作成
Araghiらの研究によれば、6〜12ヶ月間のダイエットでBMIが平均2.3kg/㎡減少した患者群において、AHIが平均6も減少しました。
その他、多くの研究でも一貫して体重減少はAHIを改善させ、体重減少の幅が大きければ大きいほど、AHIの改善度も大きいです。
【参考】Effectiveness of Lifestyle Interventions on Obstructive Sleep Apnea (OSA): Systematic Review and Meta-Analysis
低換気の改善
ダイエットによって、低換気(1回の呼吸によって取り込める空気量の減少)の改善が期待できます。
肥満が換気に与える影響は主に下記の2つです。
- 気道狭窄
- 腹部の脂肪による肺の圧迫
上記理由から肥満では低換気に陥りやすく、体内の二酸化炭素をうまく排出できなくなります。
高二酸化炭素血症に陥ると身体に多大なるストレスがかかるため、ダイエットでの改善を目指しましょう。
睡眠時無呼吸症候群に対するダイエットの目標や目安
ダイエットの前に目標設定を定めておくことで、より効果的に結果を出せます。
睡眠時無呼吸症候群に対するダイエットの目標や目安を紹介します。
【参考】日本呼吸器学会-睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020
日本内科学会雑誌-睡眠時無呼吸症候群(SAS)の疫学
MedlinePlus-Obstructive sleep apnea – adults
BMI25未満
ダイエットの目標としてBMI25未満を目指しましょう。
BMIは「体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)」で算出される肥満度を示す指数です。
BMI25以上は肥満に分類され、睡眠時無呼吸症候群の発症リスクが増加するだけでなく、高血圧や糖尿病、心筋梗塞や脳卒中の発症リスクも増加するため、注意が必要です。
BMIは自身の身長・体重で簡単に算出できるため、まずはセルフチェックしましょう。
首回りのサイズ
首回りのサイズも、ダイエットの指標の1つです。
首回りのサイズが大きいほど、睡眠時無呼吸症候群のリスクも増加するためです。
男性では43cm以上、女性では41cm以上の場合、リスクが高くなるため注意しましょう。
睡眠時無呼吸症候群に有効なダイエット方法
睡眠時無呼吸症候群に有効なダイエット方法は2つです。
- 食事療法
- 運動療法
2つのダイエット法を組み合わせることでより高い効果を得られるため、ぜひ実践しましょう。
【参考】日本呼吸器学会-睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020
順天堂大学医学部附属順天堂病院-肥満の食事療法
厚生労働省-肥満症・メタボリックシンドロームの人を対象にした運動プログラム
食事療法
睡眠時無呼吸症候群のダイエットには食事療法が有効です。
睡眠時無呼吸症候群の診療ガイドライン上では、脂質や糖質を可能な限り制限して摂取カロリーを抑えつつ、不足しがちな必須アミノ酸・ビタミン・ミネラル類の摂取を推奨しています。
野菜やタンパク質を主として、食事から摂取しにくい成分はサプリメントで補充することも良い選択肢です。
運動療法
睡眠時無呼吸症候群のダイエットには運動療法も有効です。
有酸素運動は肥満解消に効果的であり、低負荷の無酸素運動も呼吸筋増強に伴うAHIの改善が期待できます。
具体的には下記のようなメニューがおすすめです。
- 有酸素運動:水泳やランニングを週に5日以上(最低でも1回30分)
- 無酸素運動:スクワットなどの低負荷トレーニングを週に3日程度(1メニューで約10回を2〜4セット)
有酸素運動と無酸素運動を組み合わせることで、運動に飽きにくく継続しやすくなる効果も期待できるため、ぜひ実践しましょう。
まとめ
今回の記事では、睡眠時無呼吸症候群におけるダイエットの効果や目標について詳しく解説しました。
中等症以上の睡眠時無呼吸症候群に対してはCPAP療法が推奨されますが、これはあくまで症状を抑えるための対症療法であり、根本の原因である首回りの脂肪が減るわけではありません。
背景に肥満がある場合、CPAP療法に依存することなく、ダイエットによって根本から治療することが推奨されます。
本記事を参考に、しっかりとした目標を設定して正しく効率の良いダイエットを実践しましょう。
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