肥満はいびきの代表的な原因であり、放置すればさまざまな病気の発症にかかわるため、早期から適切な対策が求められます。
本記事は下記のような方におすすめです。
いびきと肥満の関係を正しく理解し、適切な治し方で自身の健康を守りましょう。
- 周囲からいびきがうるさいとよく指摘される
- いびきの原因や肥満との関係を知りたい
- 正しいいびきの治し方を知りたい
いびきと肥満の関係
いびきと肥満には非常に密接な関係があります。
特に肥満度の高い方はいびきをかきやすくなるため、注意が必要です。
【参考】
栄養学雑誌-睡眠時無呼吸症候群(SAS)患者の重症度に影響する肥満、食意識・食行動および生活習慣
日本呼吸器学会-呼吸器Q&A
日本肥満学会-表 肥満度分類
JCSM-Body weight and obstructive sleep apnea: a mathematical relationship between body mass index and apnea-hypopnea index in veterans
なぜ太ってるといびきをかくの?
太ってるといびきをかく理由は、首回りの脂肪が気道を圧排するためです。
気道とは鼻咽頭から声帯・気管までの空気の通り道のことで、空気が通過する際に気道が狭いと喉が振動していびきをかきます。
睡眠中は舌根が後方に落ち込むため普通の人でも気道が狭くなりやすく、肥満の方は首回りに脂肪が多く付いているため、さらに気道が狭くなり、いびきをかきやすいです。
いびきは自覚できないことも少なくないため、太ってる人はパートナーや家族にいびきの有無を確認することをおすすめします。
どれくらいデブだと危険?
肥満度を示すBMI(Body Mass Index)と呼ばれる数値が高ければ高いほど、いびきのリスクも高くなる傾向にあります。
BMIとは、「体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)」で算出される肥満度を示す指数です。
例えば、身長1.6m、体重80kgの方のBMIは、80÷1.6÷1.6=31.25(kg/㎡)です。
日本肥満学会ではBMIをもとに肥満度を下表のように分類しています。
BMI | |
低体重 | 18.5未満 |
普通体重 | 18.5以上25未満 |
肥満(1度) | 25以上30未満 |
肥満(2度) | 30以上35未満 |
肥満(3度) | 35以上40未満 |
肥満(4度) | 40以上 |
【参考】日本肥満学会-表 肥満度分類をもとに作成
2022年のFattlalらの報告でも、BMIの増加とともにいびきを主症状とする睡眠時無呼吸症候群の重症度が悪化していくことが報告されています。
さらに、BMI40以上(肥満4度)では33%に中等症、98%に軽症の睡眠時無呼吸症候群が認められたと報告しており、BMIの増加とともにいびきのリスクも増加することがわかります。
BMIは自身の身長と体重だけで簡単に算出できるため、一度セルフチェックするとよいでしょう。
肥満でいびき対策しないとどうなる?
いびき自体は病気ではありませんが、そのまま放置すればさまざまな病気や症状の原因となるため、注意が必要です。
- 眠気が改善しない
- 睡眠時無呼吸症候群の原因となる
- 心疾患・脳卒中発症リスクが増加する
【参考】
日本内科学会雑誌-睡眠時無呼吸症候群(SAS)の疫学
日本呼吸器学会-睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020
厚生労働省e-ヘルスネット-睡眠時無呼吸症候群/SAS
眠気が改善しない
いびきの音刺激が脳に伝わり、気道が狭くなることで取り込める酸素量が低下することで、睡眠しているにもかかわらず脳が十分休めなくなります。
つまり、いびき対策を怠ると、睡眠の質が著しく低下するため十分な睡眠がとれなくなります。
また、いびきによって途中で覚醒してしまう中途覚醒も頻発し、睡眠の質が低下するため、睡眠時間を確保したにもかかわらず、日中強い眠気に襲われることもあります。
睡眠時無呼吸症候群の原因となる
睡眠時無呼吸症候群とはその名の通り、睡眠中に気道が狭くなることで呼吸量が減る、もしくは一定時間完全に呼吸が止まる病気のことです。
1999年から2009年の間に新潟県内の病院で実施された研究では、睡眠時無呼吸症候群ではない患者群(1319人)と、睡眠時無呼吸症候群の患者群(8857人)のBMIの平均を比較しています。
その結果、睡眠時無呼吸症候群ではない患者群は22.7±1.4kg/㎡、睡眠時無呼吸症候群の患者群は26.1±1.5kg/㎡であり、明らかにBMIが高い人で睡眠時無呼吸症候群を発症しやすいことが報告されています。
一方で、日本人は顔の骨格的に顎が小さく面長で、欧米人の骨格と比較して気道が狭くなりやすいため、肥満でない人でも睡眠時無呼吸症候群を発症する人は少なくない点には注意すべきです。
【参考】佐藤 誠:非肥満の閉塞性睡眠時無呼吸.第2章 診断.最新医学 別冊 診断と治療のABC睡眠時無呼吸症候群 119 :137―144, 2017.
心疾患・脳卒中発症リスクが増加する
肥満は高血圧や糖尿病などの生活習慣病とも関連しており、心筋梗塞や脳卒中の発症リスクを増加させる可能性がある病態です。
さらに、肥満によるいびきを放置すると、睡眠中に身体に取り込める酸素量が低下し、身体は持続的な低酸素状態に陥ります。
低酸素状態によって交感神経が不必要に活性化してしまうため、高血圧や糖尿病・心筋梗塞や心房細動・脳卒中などの発症リスクを増加させることが知られています。
いびき改善のためにはダイエットしよう!
ダイエットによって首回りの脂肪がすっきりすれば、睡眠中でも気道が開通され、いびきを軽減する効果が期待できます。
また、いびきの改善以外に生活習慣病の予防にもなるため、ダイエットは大変おすすめです。
実際に、日本呼吸器学会の提唱する「睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020」では、肥満を伴う全ての睡眠時無呼吸症候群患者に生活習慣の是正とダイエットを推奨しています。
【参考】
日本内科学会雑誌-睡眠時無呼吸症候群(SAS)の疫学
日本呼吸器学会-睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020
e-SAS.JP-運動や食事などの生活習慣
ダイエットの目安
肥満に伴ういびきを改善させるための目安として、BMI25未満、もしくは体重の10%減少を目指しましょう。
Wisconsin Sleep Cohort study(WSCS)の研究結果では、睡眠時無呼吸症候群の重症度は10%の体重増加で32%増加し、10%の体重減少で26%も減少したそうです。
もちろん、いびきの原因は肥満以外に小顎・巨舌・アデノイドなどさまざまであり、必ずしもダイエットで改善する訳ではありません。
しかし、BMI25以上の肥満の方は生活習慣病のリスクも高いため、正常上限である25未満になるようにダイエットすることがおすすめです。
ダイエットの方法
いびき改善のために効果的なダイエットの方法は、バランスの良い食事と運動の併用です。
必須アミノ酸やビタミン類をしっかり摂取し、無駄な糖質や脂質は控えてカロリーを制限しましょう。
また、ランニングや水泳などの有酸素運動だけではなく、ある程度筋肉に負荷をかける無酸素運動の併用もおすすめです。
無理のある目標設定ではダイエットは継続できなくなるため、まずは体重の5〜10%減少を目標に設定するとよいでしょう。
まとめ
今回の記事では、いびきと肥満の関係について詳しく解説しました。
肥満によって気道が狭くなることでいびきが生じやすくなり、睡眠の質の低下や睡眠時無呼吸症候群の発症を招きます。
また、肥満は生活習慣病とも関連しており、睡眠時無呼吸症候群の悪化とともに、高血圧や糖尿病、心筋梗塞や脳卒中の発症リスクを増加させるため、注意が必要です。
簡易的にチェックできるBMIを利用して、肥満を認める方はいびき対策のためにぜひダイエットを実践しましょう。
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