身近な生活習慣病のひとつとして有名な糖尿病について、糖尿病の基礎知識から合併症についてまとめました。
医師監修のもと、糖尿病に関する情報を発信します。
これを読んで、糖尿病について知識をつけ、正しい対処法を理解してください。
糖尿病とは?
糖尿病とは、血液中のブドウ糖(血糖)の利用がうまくいかずに血糖値が上がってしまう病気です。
血糖値がいつも高い状態が続いてしまうと、血管をはじめとする全身の組織に悪影響が及びます。
平成24年の調査では、全国約950万人に糖尿病を強く疑われる人が存在するということがわかっており、その中でもほとんどが「2型糖尿病」だといわれています。
症状が出てきたときにはかなり血糖値が高くなっていることもよくあります。
糖尿病は自覚症状が目にみえてわかりにくい病気だといわれていることから「サイレント・キラー」ともよばれています。
少しの違和感でも放置したままにすると、糖尿病合併症が進行してしまうことがあります。
糖尿病による合併症
糖尿病の合併症には大きく分けて2種類の合併症があります。
インスリン作用不足が高度となっておこる「急性合併症」長年の糖尿病によっておこる「慢性合併症」があります。
糖尿病の合併症① 急性合併症について
急性合併症は感染症(糖尿病の方は感染症にかかりやすいといわれています)や脱水、治療の中断や甘いジュース等の飲みすぎなどがきっかけとなって異常な高血糖をきたす場合があります。
適切に治療を行わなければ命に関わる可能性があるのが急性合併症です。
高血糖の急性合併症には、糖尿病ケトアシドーシスと、高浸透圧(こうしんとうあつ)高血糖症候群があります。
急性合併症が起きた場合には、すぐに治療をする必要があります。
また、高血糖を起こさないように予防をすることが大切です。
糖尿病の合併症② 慢性合併症について
慢性合併症は、血液中の糖の濃度(血糖値)が何年間も高いままでいると、血管が傷ついたり詰まったりして血流が滞ってしまいます。
高血糖が原因で血管とつながる臓器が損傷してしまうと糖尿病に関連するさまざまな合併症が生じます。
慢性合併症は進行するまで症状が出ないこともあり、気が付かないうちに合併症が進むと時として命にかかわる重い状態となることもあります。
慢性合併症の症状は大きく「大血管症」と「細小血管症」の2種類
慢性的に高血糖状態が続くと慢性合併症として、大血管症と細小血菅症の2種類があります。
大血管症
細小血管症 以外の合併症として、太い血管が損傷を受けて起こる「大血管症」とよばれる合併症があります。
血糖値が高い状態が続くと動脈硬化が進行して大きな血管が詰まりやすくなります。
糖尿病がない方に比べて約2〜4倍、心筋梗塞、脳梗塞を起こしやすいともいわれています。
狭心症、心筋梗塞は強い痛みが出るのが特徴です。
・動脈硬化性の病気
血糖値が高いと細い血管ばかりか太い血管の損傷「動脈硬化」も起こります。その結果として、狭心症や心筋梗塞などの心臓病、脳梗塞や脳出血などの脳卒中が起こりやすくなります。
足の動脈硬化から歩行が困難になったり、足潰瘍・足壊疽が起きたりもします。
・感染症にかかりやすくなる場合がある
高血糖は免疫機能を低下させたりして、感染症にかかりやすくなる場合があります。かぜやインフルエンザ、肺炎、結核、水虫などにもより注意が必要です。
細小血管症
細小血管症とは、糖尿病に特有な合併症として細い血管が傷つけられて生じる状態です。
人間の体内には細い血管が多数存在し、指先や目、腎臓などに張り巡らされています。
大きく分けて細小血管症には3種類の疾患があります。
糖尿病の3大合併症といわれている
糖尿病神経障害
糖尿病網膜症(目の合併症)
糖尿病腎症
それぞれについて説明していきます。
糖尿病の3大合併症
糖尿病の中で最大の注意点として糖尿病の3大合併症です。
これらの疾患は皆様の生活に大きく影響する可能性があるため、注意が必要です。
糖尿病神経障害
糖尿病性神経障害とは、末梢神経や自律神経に影響を与える疾患です。
糖尿病が進行すると足先から神経がダメージを受けて、体の隅々まで張り巡らされている末梢神経障害、体の調子を整える自律神経がダメージを受ける自律神経障害を引き起こすことがあります。
高血糖により末梢神経が障害されてしまい手足に痛みやしびれなどの感覚異常があらわれる合併症です。
糖尿病性神経障害によって足先などの感覚器官の知覚が低下し、発見や治療が遅れてしまった場合は足壊疽まで進行して足の切断が必要になる場合もあります。
足の変化には特に注意が必要です。
糖尿病網膜症(目の合併症)
糖尿病性網膜症とは、血糖が目の中の視神経や神経細胞にダメージを与え、視力の低下や失明につながる疾患です。
目の内側には、網膜という膜状の組織があり、光や色を感じる神経細胞が敷きつめられています。
高血糖の状態が長い間続くと細い血管が動脈硬化により損傷を受けてしまい視力が弱まってきます。
糖尿病網膜症の一般的な進行の仕方
単純網膜症・・自覚症状はほとんどといってありません。
血管の一部が破れて点状・斑状の小さな出血が生じてしまう状態です。
↓
増殖前網膜症・・視力の低下を感じることがあります。単純網膜症より進行した状態です。
↓
増殖網膜症・・網膜に新生血管が発生しその周囲に増殖膜が形成された状態です。増殖膜が網膜をひっぱって網膜剥離を起こし失明するおそれがあります。
進行がすすむとレーザー治療が必要となったり、不幸にして失明に至るケースもあります。
日本人の失明の原因の第2位が糖尿病網膜症です。
進行してしまうと出血や網膜剥離を引き起こしたり失明に至るケースもあります。
糖尿病腎症
糖尿病腎症とは、糖尿病3大合併症の一つであり、慢性的な高血糖状態が腎臓に損傷を与える疾患です。
腎臓は腰のあたり左右にあり、血液中の老廃物を処理して尿をつくるとても重要な臓器です。
糖尿病が進行すると腎臓の作用が弱まり血液検査や尿検査で異常が現れやすく、一般的には、尿検査で尿蛋白がでてきます。
腎臓が傷ついてしまい、本来尿に出るべきではないタンパク質が漏れ出てしまっている状態です。
さらにこの状態が進むとクレアチニンという腎臓の機能を図る数値が上昇してきます。
糖尿病の方は高血圧症を合併しているケースも多いといわれていますが高血圧症も腎臓へダメージを及ぼしてしまいますので、複合的な要因で腎臓がダメージを受けることも多いです。
腎障害が進行してしまい、自分の力で尿を作ることが難しくなると人工透析を受ける必要が出てきます。
現在、人工透析になる原因の第1位がこの糖尿病性腎症といわれております。
出典:全国健康保険協会(協会けんぽ)「糖尿病の恐さは三大合併症」
その他の合併症
高血圧や脂質異常症、骨粗鬆症、歯周病なども発症する可能性があります。
糖尿病合併症を発症させないためには
糖尿病の早期発見と治療開始によって糖尿病合併症を予防できることが確かめられていますが、現状は糖尿病の発見が遅れる人が多いといわれています。
糖尿病は重症化するまでほとんど自覚症状が少なく、気がづいたときには合併症が進行している場合があります。
定期的な健康診断、適切な治療を受けて血糖値を良い数字にコントロールしておくことが合併症の発生を防ぐことができます。
また、糖尿病のみならず脂質・血圧の管理も動脈硬化の予防には大変重要です。
・定期的に医療機関を受診し、検査・治療を継続する
・適正な食事、運動を心掛ける
・血糖値を目標の値にコントロールする
・血圧・コレステロールの値を望ましい範囲にコントロールする
・喫煙をしない
・体重を望ましい範囲にコントロールする
日ごろの小さな積み重ねが糖尿病の合併症を予防するポイントです。
まとめ
糖尿病合併症は、運動療法や食事療法、血糖コントロールを適切に行うことである程度は予防することができます。
また、医師の診断による必要に応じた投薬治療、早期発見・早期治療で迅速に適切な対策ができるよう健康診断などの定期的な受診が大切です。
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