睡眠を支配するのは「睡眠圧」と「体内時計」
眠くなってはならない時に、眠気に襲われて、寝落ちしそうになったことはありませんか。
また眠たくない時に、いくらがんばって眠ろうとしても、なかなか眠れるものではありません。
これらの馴染みのある眠気や睡眠を考えるにあたり、大切なのは「眠気:睡眠圧」です。
眠気を自分でコントロールできたら、日常生活がより快適に過ごすことができそうだと、感じられる方も少なくないのではないでしょうか。
それでは眠気とは、いったい何なのでしょうか。
眠気の正体は「睡眠医学のブラックボックス」ともいわれ未知なるものでした。
近年の研究で少しづつ、解明されてきています。
睡眠の仕組みである、ツー・プロセス・モデル
以前から、睡眠のしくみは「ツー・プロセス・モデル」とよばれる仮説が提唱されています。ツー・プロセス、すなわち二つの組み合わせによって、睡眠覚醒のリズムが生じているという仮説です。
眠くなる原因・理由① 「眠気:睡眠圧」
一つ目は、睡眠の欲求の強さである「眠気:睡眠圧」です。
眠気:睡眠圧は、覚醒している間にどんどんたまっていきます。蓄積されると眠気:睡眠圧が高まり、どこかのタイミングで睡眠に入れ替わります。
そして、眠ることによって眠気:睡眠圧が解消されるのです。睡眠圧の蓄積と解消は、十分に水がたまると傾いて水を吐き出す「ししおどし」にたとえることができます。
眠くなる原因・理由② 約24時間周期の「体内時計」
そして、二つ目が、約24時間周期の「体内時計」です。体内時計は、眠気:睡眠圧の蓄積とは独立していて、覚醒の強さに影響をきたします。
例えば、眠気が蓄積していない状況でも、覚醒が弱まれば、眠気が強くなります。
この覚醒シグナルは午前0時頃に眠る週間の方では、2-3時間前の午後9時頃にピークをむかえ、その後に弱まります。すると、眠気のししおどしが傾くことで睡眠がはじまり、睡眠圧が十分に解消されるまで睡眠がつづくのです。
眠気とスニップス
覚醒している間にたまりつづけ、睡眠によって解消される「眠気:睡眠圧」の実体とは、いったい何なのでしょうか?
これまでは「なぜ眠くなるのか?」がブラックボックスでしたが、その正体が少しづつ解明されています。
筑波大学の研究チームによって2018年に発見された脳内の減少が有力な仮説となっています。
それは「スニップス」と名づけられた、脳内にある80種類のタンパク質にみられる化学変化です。
スニップスのうち、実に69種類が、神経細胞が別の神経細胞に信号を伝える「シナプス」とよばれる神経間隙に集中して存在していました。
マウスの実験では、スニップスは、覚醒している間、「リン酸化」とよばれる化学変化が進み、徐々に蓄積することがわかりました。
そして、このスニップスの「リン酸化」は、睡眠によって蓄積されたものが解消されるのです。
こうしたスニップスの変化は、まさに眠気の実態と近しいものなのです。
この考えが正しければ、睡眠不足が積み重なった「睡眠負債」の状態の脳では、リン酸化されたスニップスが解消しきれずに蓄積し、そのせいでシナプスのはたらきが脳全体で非効率になっているのかもしれません。
コメントを残す