「CPAPを使っているけれど、本当に効果があるのか分からない」「毎晩使うのが大変で、続けられていない」 という方はいらっしゃいませんか。
2026年7月に千葉県・幕張メッセで開催された「日本睡眠学会第50回定期学術集会」では、CPAP治療の使用時間と健康リスクの関係について、最新の知見が報告されました。
この記事を読むと以下のことが分かります
- CPAPを1日4時間以上使うことがすすめられる理由
- 睡眠時無呼吸症候群を治療せずに放置した場合のリスク
- 深い睡眠と脳の健康の関係
- 睡眠薬を選ぶときの考え方
CPAPは「1日4時間以上・使用日数70%以上」が目安とされる理由
CPAP(持続陽圧呼吸療法)とは、睡眠中にマスクを装着し、空気の圧力によって気道が塞がらないようにする、閉塞性睡眠時無呼吸症候群の代表的な治療法です。
診療の中では、患者さまに「CPAPは1日平均4時間以上、使用日数は70%以上を目指しましょう」とお伝えすることが多くあります。
学会で紹介された観察研究では、CPAPを十分に継続できなかった人は、継続できた人に比べて死亡リスクが約1.74倍高かったという結果が報告されていました。
ただし、これは「4時間使えばそれで十分」という意味ではありません。4時間はあくまで一つの目安であり、本来は入眠から起床まで、できるだけ継続して使用することが望ましいとされています。
未治療の重症睡眠時無呼吸症候群は心血管疾患のリスクを高める
睡眠時無呼吸症候群を治療せずに放置すると、心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患のリスクが高まることが知られています。
過去の長期観察研究では、未治療の重症睡眠時無呼吸症候群がある男性は、健康な人と比べて致死性・非致死性の心血管イベントが約3倍に増えていたと報告されています。
一方で、重症の睡眠時無呼吸症候群があってもCPAP治療を継続していた人では、心血管イベントの発生率が健康な人に近い水準にとどまっていました。
深いノンレム睡眠は、脳の老廃物を排出する時間でもある
睡眠中には、脳の中の老廃物を排出する「グリンパティックシステム」という仕組みが働いていると考えられています。
マウスを用いた研究では、睡眠中に脳の細胞と細胞の間の隙間が、覚醒時より60%以上広がることが示されています。そこに脳脊髄液が流れ込むことで、アミロイドβなどの老廃物の排出が促されると報告されています。
この老廃物の排出には、特に深いノンレム睡眠が重要と考えられています。深いノンレム睡眠は、入眠後の前半に多く現れる傾向があります。
睡眠時無呼吸症候群によって呼吸が止まり、低酸素状態になったり睡眠が何度も分断されたりすると、この深い睡眠の時間が削られてしまう可能性があります。そのため、CPAPは夜中からではなく、できるだけ入眠時から装着することが望ましいとされています。
睡眠薬(オレキシン受容体拮抗薬)は種類によって特性が異なる
不眠の症状に対して用いられる薬の一つに、オレキシン受容体拮抗薬(DORA)があります。
オレキシンとは、覚醒を維持する働きを持つ神経伝達物質で、日本の研究者によって発見されました。この仕組みを利用して開発されたのがオレキシン受容体拮抗薬です。
現在、日本では発売順に4種類のDORA(ベルソムラ、デエビゴ、クービビック、ボルズィ)が使用されています。これらは同じ種類の薬に分類されますが、最高血中濃度に達するまでの時間(Tmax)や、薬の血中濃度が半分になるまでの時間(消失半減期)、受容体への結合・解離の特性などがそれぞれ異なります。
そのため、同じ薬でも効果の感じ方や翌日への持ち越し感には個人差があります。睡眠薬の選択や量の調整は自己判断で行わず、必ず主治医と相談しながら進めることが大切です。
まとめ
CPAP治療は、いびきや日中の眠気を改善するだけでなく、心臓や脳の血管を守り、深い睡眠を確保することにもつながる治療です。
学会で報告された研究はいずれも観察研究であり、効果がすべての方に保証されるものではありませんが、CPAPを毎日、できるだけ入眠時から継続して使用することの重要性を示す結果と言えます。
いびきや睡眠中の無呼吸を指摘された方、CPAPの使い方に不安がある方は、自己判断せず一度ご相談ください。
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