眠っている間に呼吸が止まってしまう睡眠時無呼吸症候群は睡眠の質を下げるだけでなく、長期的に見れば心臓や脳などの重篤な病気の原因にもなるため、不安を抱えている方も少なくないと思います。
特に多くの人が気になるのは「果たしていつまで治療を続けなくてはならないのか」です。
風邪や腸炎と違って、治療を始めてから治るまでの流れが分からないと不安が大きいと思います。だからこそ、これから治療する方も、すでに治療を始めている方も治療期間はとても気になりますよね。
そこでこの記事では、睡眠時無呼吸症候群の治療期間や治療のスケジュールについて説明していきます。
実際の治療法や、治療にかかる費用などについても解説していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
睡眠時無呼吸症候群の治療のスケジュールは?
何らかの病気と付き合っていく上で、治療のスケジュールがどのようなものか分からないと不安が大きいですよね。
また、診療計画やそれぞれの治療の進捗次第で治療期間も大きく変わってきますが、一般的には下記のようなスケジュールで治療が行われていきます。
問診や検査による確定診断、診療計画の策定、通院による治療という流れです。
それぞれについて、さらに詳しく解説していきます。
睡眠時無呼吸症候群の治療スケジュールの全体像
引用:睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020
睡眠時無呼吸症候群の初回問診から確定診断・治療へのスケジュールの全体は上記のような図にまとめられます。
睡眠時無呼吸症候群の疑いから、問診によって治療方針を策定し具体的な治療へと進んでいきます。
初診・問診
睡眠時無呼吸症候群を診断する上で最も大切な初回問診を行います。
睡眠に関する自覚症状や睡眠状態をヒアリングしていきます。
睡眠時無呼吸症候群に特徴的な症状として、昼間の眠気、倦怠感、パフォーマンスの低下などを問診していきます。
また、それ以外に既往歴や身体診察や口腔内の診察も重要です。
例えば、肥満が進行して症状を認めた場合はダイエットを行う必要がありますが、口の中の扁桃肥大が原因で症状を認めている場合は外科的手術も検討が必要なため、診察所見によって治療方針の大筋がきまります。
問診は基本的に1日で行われ、問診の結果疑わしいと判断された場合は検査に進みます。
自宅検査
睡眠中の呼吸状態をモニタリングするため、多くの場合は自宅で1晩か2晩で行う簡易的な検査を行います。
自宅検査では、寝室や寝具、寝装品など、より普段の睡眠に近い状態で検査ができるメリットがあり、睡眠時間(いつ寝て、いつ起きたか)の情報を合わせて総合的な判断をします。
自宅検査によって簡易的に睡眠時無呼吸症候群に対する検査を行い、必要に応じてさらに精密な確定検査を受けることになります。
確定検査・精密検査
自宅検査の結果、いよいよ睡眠時無呼吸症候群の可能性が高いと判断された場合は、医療機関に入院していただき確定検査を受けることになります。最近ではいびき・無呼吸の方であれば在宅での検査も可能となっており、医師との相談して決めます。
この確定検査は簡易検査と異なり、より詳しく睡眠中の呼吸の質や、脳波による睡眠の質を評価しています。
検査結果・診療計画
簡易検査や精密検査を終えた後、検査結果が出るまでは概ね1-2週間程度かかります。
検査の結果、治療が必要と判断された場合はその程度や症状に応じて、それぞれの状態に見合った診療計画を立てていくことになります。
具体的には、軽症の睡眠時無呼吸症候群であれば体位療法やOA療法が治療の中心となりますが、中等症以上(AHI≧20)であればCPAP療法が治療の中心となり、扁桃肥大や、軟口蓋肥大などの物理的な原因が主要因と考えられる場合は外科的手術も検討することになります。
それぞれの治療法については後述で詳しく解説します。
診療計画次第で治療期間や費用にも大きな違いが出てくるため、医師と相談の上、一緒に検討していく必要があります。
通院
診療計画が決まれば、そこから実際に治療を開始し、定期的な医療機関への通院が必要になります。
これは、治療効果の判定や治療に伴う体調変化の有無を医師が診察する必要があるからです。
通院期間や通院頻度は治療経過によって個人差があり、月に1度か最長でも3か月に一度は通院していただくことになります。
睡眠時無呼吸症候群の一般的な治療期間は?
睡眠時無呼吸症候群で悩むほとんどの方は、自分の病気と向き合う治療期間を気にされています。
結論から言えば、治療期間は原因や治療法によって大きく異なります。
睡眠時無呼吸症候群は睡眠中の呼吸が弱くなる、もしくは呼吸が停止する状態を指しますが、その原因は患者様によって違うため原因次第では治療にかかる期間も異なってきます。
治療期間の大まかな流れについて解説していきます。
初診・問診で1日程度
まず、病院に受診された初日は患者様の状態を把握するために問診を行います。
問診で得た情報は睡眠時無呼吸症候群の診断や治療へと活用していきます。
主な問診科目は以下の4つです。
・日中に強い眠気を感じる事があるか
・夜間のいびきを周囲から指摘された事があるか
・いびきの音が変化して呼吸が止まる事があるか
・睡眠中何度も目を覚ます事があるか
問診の結果、睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合には具体的な検査へと進んでいきます。
自宅検査で1日~2日
睡眠時無呼吸症候群が疑わしい場合は自宅で簡易検査を行い、手呼吸状態やいびきをチェックします。
具体的な検査内容は、体の中にどれくらい酸素が取り込まれているかを測るパルスオキシメーターや、呼吸の気流を測定する鼻圧センサーなどが用いられます。
睡眠時無呼吸症候群は睡眠中に無呼吸が出現する病気ですので、患者さんの呼吸状態をチェックし、確定診断へと情報収集します。
精密検査 1日
問診と自宅検査の結果を統合し睡眠時無呼吸症候群が疑わしいと判断された場合、さらに精密な検査に進みます。
この精密検査はポリソムノグラフィー(PSG)と呼ばれ、睡眠中の脳波や筋電図などをモニタリングし、対象者の睡眠深度や睡眠の質を評価します。
精密検査の結果、睡眠時無呼吸症候群と診断され治療が必要と判断された場合は治療のフェーズに移ります。
睡眠時無呼吸症候群の治療法
睡眠時無呼吸症候群には様々な治療法がありますが、それぞれの症状や程度によって最適な治療方法を選択していくことが非常に重要です。
また、睡眠時無呼吸症候群は長く付き合っていく必要がある病気であるため、治療の意義や必要性を十分理解しておく必要があります。
具体的な治療法としては、減量やマウスピース、CPAP療法などが挙げられます。
各治療方法について1つ1つ具体的にご紹介します。
生活習慣の改善・減量
睡眠時無呼吸症候群に対する治療方法の一つとして生活習慣の改善や体重減量が挙げられます。
体重管理はどの方にとっても取り組みやすい治療方法ですので、まずは生活習慣の見直しから始めていきましょう。
減量が有効な理由として、肥満体型になると首周囲に脂肪が付いてしまうため、気道が狭くなりいびきや無呼吸の原因となってしまうため、脂肪を落とす目的があります。
特にBMI 30 kg/㎡以上の方であれば、高血圧や脂質異常症、糖尿病などの他の生活習慣病のリスクもあるため注意が必要です。
マウスピース
軽症の睡眠時無呼吸症候群であれば、マウスピースによる治療も検討すべきです。
マウスピース装着によって下顎が上顎よりも前方に出るように固定できるため、上気道が広がりいびきや無呼吸を防ぐことができるからです。これまでの臨床研究からは、若年・やせ型の方に効果が得られやすいことが分かっております。
実際に装着する場合は、専門知識のある歯科医院で自身の型に合ったものを作製してもらう必要があります。
しかし、マウスピースによる治療は中等症以上の睡眠時無呼吸症候群では比較的効果が得られにくいため、重症度によっては他の治療を考える必要があります。
CPAP
CPAPは、中等度から重症の睡眠時無呼吸症候群の患者に対しては治療の第一選択であり、最も推奨される治療法です。
「Continuous Positive Airway Pressure:持続陽圧呼吸療法」の略で、睡眠中に鼻や口を覆う特殊なマスクを装着して持続的に気道に空気を送ることで、気道が塞がらないように圧をかけることができます。
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