内分泌内科

甲状腺と甲状腺疾患について

甲状腺とは?

首の前部、喉仏のすぐ下にあり、蝶々のような形をして気管を抱き込むように位置しています。大きさは約4cmほどの臓器です。

甲状腺はヨウ素をもとに甲状腺ホルモンを生成しています。甲状腺からは「T4」「T3」という2種類のホルモンが作られます。生成された甲状腺ホルモンは血液を介して全身を巡って脳や心臓、骨、筋肉、皮膚などの全身の新陳代謝の促進・交感神経の活性化(精神状態)、子どもの成長や発育にも重要なホルモンです。

また、体内では血液中の甲状腺ホルモンの濃度は一定に保たれるようになっています。

甲状腺ホルモンが過剰に存在する場合

甲状腺ホルモンの分泌量が多すぎると、必要以上に全身の代謝が高まります。甲状腺ホルモンが血液中に多く存在することで、さまざまな病状を引きおこすことを「甲状腺中毒症」といいます。

主に2つの原因があります。

甲状腺の過剰な活動

「甲状腺機能亢進症」とよばれ、代表的な病気は「バセドウ病」です。

バセドウ病は何人かの芸能人や政治家が発症したこともあることから、一般的にも良く知られている疾患の一つです。

主な症状は以下6つです。

疲れやすくなる
全身の倦怠感
体重減少
動悸、息切れ
汗がかきやすくなる
手の震え

特に易疲労感や全身倦怠感は、他の疾患の自覚症状と似ていたり、単なる疲れとして認識されやすく、初期症状に気づきにくいのが特徴です。

原因不明の倦怠感が数か月続く場合には早めの医療機関の受診をおすすめします。

甲状腺の障害

2つ目の原因として「破壊性甲状腺炎」があります。

これは甲状腺が破壊されて貯蔵されていた多量の甲状腺ホルモンが血液中に放出されることで一過性甲状腺中毒症状を引き起こします。

「無痛性甲状腺炎」「亜急性甲状腺炎」といわれる症状が代表的です。

あまり有名ではありませんが、甲状腺機能障害の一つです。

これらの疾患は比較的自然治癒する場合が多く、経過観察などによって対応します。

甲状腺ホルモンが不足している場合

甲状腺ホルモンが不足すると、心身の働き全体が低下します。

甲状腺の働きが足りずに甲状腺ホルモンの分泌が不足している状態を「甲状腺機能低下症」と呼びます。

甲状腺機能低下症の代表的な病気は「橋本病」(慢性甲状腺炎)です。

注意点は初期状態では症状が出にくい(わかりにくい)ことが多いので注意が必要です。

主な症状として以下があります。

汗をかきにくい
肌がカサカサと乾燥している
髪の毛や眉毛が薄くなる
むくみ
集中力低下
冷え性、寒がりになる
便秘ぎみ

適切な内服治療等を行うことで寛解に至ることは可能です。

気になることがありましたら積極的に専門医の診察でご相談ください。

参考文献:一般社団法人日本甲状腺学会

一般社団法人 日本内分泌学会

記事監修医

医師 木村 哲也

日本内科学会 総合内科専門医・認定内科医
日本内分泌学会 内分泌代謝科 専門医・指導医
日本糖尿病学会 専門医
日本甲状腺学会 専門医
医学博士

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