甲状腺炎の特徴についてまとめています。
この疾患は甲状腺が壊れて一過性に甲状腺中毒症状を示す病気です。
今回は甲状腺炎についてまとめました。
甲状腺炎の特徴
甲状腺ホルモンは基準値を下回る場合も、上回る場合でも重大な疾患につながる可能性があり、定期的な検査が必要です。
甲状腺炎は甲状腺がなんらかの原因で破壊されてしまい、甲状腺ホルモンがあふれ出てしまう状態です。
甲状腺炎の種類
甲状腺炎は大きく分けて2種類に分けられます。
主な病気は2種類あり、甲状腺に痛みのある亜急性甲状腺炎と痛みのない無痛性甲状腺炎です。
無痛性甲状腺炎
無痛性甲状腺炎は何らかの原因によって甲状腺の細胞が壊れ、甲状腺に貯められていた甲状腺ホルモンが血液中に漏れでてくるため、一時的に甲状腺ホルモンが増加する病気です。
細胞が壊れても痛みがないため、「無痛性」甲状腺炎と呼ばれています。
無痛性甲状腺炎の主な原因
もともと慢性甲状腺炎(橋本病)を持っている方が多いことから、自己免疫疾患の病気と考えられていますが、原因はまだわかっていません。
出産後や過去にバセドウ病にかかっていた方にもよくみられます。
無痛性甲状腺炎を発症しやすい年齢
基礎疾患として橋本病(慢性甲状腺炎)をもつ20〜40歳代の女性に発症することが多いといわれています。
無痛性甲状腺炎の主な症状
血液中の甲状腺ホルモンが増加しているため、病気の初めのうちは動悸、暑がり、体重減少など、甲状腺中毒症の症状が現れます。
この後、壊れた甲状腺が回復するまでは一時的に甲状腺ホルモンが少なくなり、むくみ、寒がり、体重増加などが現れます。
また、無痛性甲状腺炎は繰り返し症状が出てしまうという特徴があります。
無痛性甲状腺炎の診断
無痛性甲状腺炎の診断は主に2種類あります。
・血液検査
・甲状腺エコー検査
症状や血液中の甲状腺ホルモン濃度だけでは、バセドウ病と区別がつきにくいことが特徴です。甲状腺機能が落ち着いてきても機能低下になることもありますので、定期的なホルモン値の検査が必要です。
無痛性甲状腺炎の治療
基本的には経過観察のみで甲状腺機能は改善していきます。
特に症状が重症でない場合や、治療の必要がない場合には定期的な検診を進めます。
症状が強ければベータ遮断薬を内服する場合があります。
回復の途中で甲状腺機能が低下することがありますが、この場合も自然によくなるのが普通です。
無痛性甲状腺炎の診断の注意点
無痛性甲状腺炎の症状だけでは、バセドウ病なのか無痛性甲状腺炎なのかを鑑別することは、専門医であってもむずかしい一面があります。
鑑別するには、甲状腺シンチ検査が有効だとされています。
バセドウ病では30~80%と高い摂取率を示しますが、無痛性甲状腺炎ではほとんどありませんので違いがわかります。
しかし、甲状腺シンチ検査ができる医療機関は限られています。
そのため、超音波検査で血流の増加が認められなければ、無痛性甲状腺炎と判断します。
亜急性甲状腺炎
亜急性甲状腺炎は甲状腺組織が破壊され、甲状腺ホルモンが過剰に働いてしまう疾患です。
(破壊性甲状腺中毒症)となるのは無痛性甲状腺炎と同様ですが、痛みを伴うこと、発熱などの炎症所見を伴う点で異なります。
基本的には一過性の病気であり、通常は1~2か月ほどの経過で落ち着きます。
似ている病気にバセドウ病がありますが、両者の治療方法は全く異なるため、両者の見極めは非常に重要です。
「亜急性」は、急性よりも長く続きますが慢性的に続くわけでもないことを指しています。
亜急性甲状腺炎の主な原因
正常だと甲状腺ホルモンの分泌量は厳密に調整されますが、亜急性甲状腺炎では、炎症により調節機能とは無関係に、大量の甲状腺ホルモンが血液中に放出されてしまいます。
その結果、甲状腺ホルモンに関連した症状が過剰に現れてしまいます。風邪のような症状に続いておこることが多く、ウイルスが甲状腺に入ることで炎症を起こすのではないかと考えられています。
亜急性甲状腺炎の発症しやすい年齢
30〜40歳代の女性に多く、20歳以下の人にはほとんど発症しません。
逆に男性の場合であればほとんど発症しないと言われています。
亜急性甲状腺炎の主な症状
亜急性甲状腺炎の主な症状は3つです。
・動悸、息切れなどの甲状腺ホルモンが多いときの症状
・甲状腺の痛みや発熱などの症状
・上気道炎様症状
ウイルスによって炎症をおこした甲状腺は非常に硬いしこりのように腫れることがあります。
炎症により甲状腺の組織が破壊されることによって一過性の甲状腺中毒症状(血液中の甲状腺ホルモンが高い値となること)を引き起こすこともあります。
また、甲状腺の痛みと腫れは、右から左というように移動することもあります。
通常このような場合は、1〜2か月ほどで回復していきます。
ただし、甲状腺が壊れてしまう病気なので、甲状腺の機能が回復するまでは一時的に甲状腺ホルモン量が低くなります。
たいていの方は正常値に戻りますが、稀にそのまま低い状態が続くことがあります。
亜急性甲状腺炎の診断
亜急性甲状腺炎の診断は主に3種類あります。
・血液検査
・超音波検査
・甲状腺シンチ検査
血液中の甲状腺ホルモンの量だけでは、バセドウ病との区別がつかないことがあります。
鑑別には甲状腺シンチ検査が有用です。
多くは超音波検査で診断可能ですが、場合によっては細胞診の検査をすることもあります。
亜急性甲状腺炎の治療
基本的には2つの方法で治療を進めていきます。
・自然治癒
・内服薬
症状がある場合には投薬で痛みや動悸を押さえます。
症状が軽い場合は頭痛薬などとして使われる非ステロイド系抗炎症剤、強い場合には副腎皮質ホルモン剤を内服します。さらに症状が強ければベータ遮断薬を内服する場合があります。
亜急性甲状腺炎の診断の注意点
亜急性甲状腺炎は、風邪や扁桃腺炎に症状が似ています。
炎症が強い時は、入浴や飲酒はおやすみし日常生活は無理をせずになるべく安静に過ごしましょう。
症状が強い場合に処方されるお薬は医師の指示通りきちんと内服しましょう。
症状が良くなったからといって、自己判断でお薬を止めてしまうと症状が再び悪化してしまう場合もあります。
なにかご不安なことがありましたら、どんなことでもご相談ください。
この病気は自然に治っていきますので、治るまでの間の不快な症状をとりのぞくことが治療の目的となります。
参考HP:一般社団法人日本甲状腺学会
一般社団法人 日本内分泌学会
記事監修医
医師 木村 哲也
日本内科学会 総合内科専門医・認定内科医
日本内分泌学会 内分泌代謝科 専門医・指導医
日本糖尿病学会 専門医
日本甲状腺学会 専門医
医学博士
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