呼吸器専門医の診療は、水曜日と木曜日の午前のみとなります。
喘息とは
喘息(ぜんそく)は、気道(空気の通り道)に慢性的な炎症が起こり、繰り返し咳(せき)や喘鳴(ぜんめい:ゼーゼー・ヒューヒューという呼吸音)、息苦しさなどの発作症状を引き起こす呼吸器の病気です。
子どもに多い病気と思われがちですが大人の方も喘息発作を起こすことがあります。日本では成人の約5%が喘息に罹患しているとされています。
成人になってから初めて発症するケースも多くあります。
喘息は糖尿病や高血圧と同じように長期にわたって付き合う必要がある慢性疾患ですが、適切な治療と自己管理を続ければ健康な人と変わらない日常生活を送ることも可能です。
「長引く咳が続く」「息苦しさが慢性的にある」といった方は、早めに専門医に相談しましょう。
喘息の原因と発作の仕組み
左の円が正常な気道を示し、右の円が喘息患者の気道断面を示しています。
喘息では気道粘膜に炎症が起こり腫れて厚くなり、筋肉の収縮や粘液の過剰分泌によって空気の通り道が狭くなっています。
このように気道が狭くなることで、呼吸時にゼーゼーという音が出たり、息苦しさや激しい咳の発作が生じます。
喘息では、気道が慢性的な炎症により傷つき過敏な状態になっています。
その結果、ハウスダスト・ダニ・花粉・たばこの煙・冷たい空気・運動などのわずかな刺激で気道が敏感に反応して空気の通り道が狭くなり、喘息発作(呼吸が苦しくなる発作)を起こします。
気道が狭くなるのは一時的で、吸入薬などで拡張させ元に戻すことができますが、発作を繰り返すうちに気道の構造が変形・肥厚してしまい、狭い状態が元に戻りにくくなることがあります。
このため、炎症を抑えて発作を起こさせないことが喘息治療の重要なポイントです。
喘息の原因
喘息には様々な要因がありますが、大きくアレルギー(アトピー)型と非アレルギー型に分類されており、主な誘因としては以下のようなものがあります。
- アレルゲン(アレルギー物質):ダニ、ハウスダスト、カビ、ペットの毛やフケ、花粉、食品など
- 気候・環境の変化:季節の変わり目の寒暖差、台風や低気圧による気圧変動、冷たく乾燥した空気の吸入
- 感染症:風邪やインフルエンザ、新型コロナなどのウイルス感染をきっかけに発症・悪化
- 大気汚染・たばこ:PM2.5などの大気汚染物質、たばこの煙(受動喫煙も含む)
- 過労・ストレス:疲労やストレスの蓄積により誘発することも
- 運動:激しい運動や長時間の運動。運動時、特に冷たい空気を吸い込むと発作の誘因になります
- 薬剤:解熱鎮痛薬(NSAIDsなど)によって誘発される喘息もあります
これらの原因が単独ではなく複合的に関与して喘息を発症・悪化させることも少なくありません。
体質も背景となることがあり、家族に喘息やアレルギー体質の方がいる場合は注意が必要です。
また、女性ではホルモンバランスの変化が影響する可能性も指摘されています。
喘息の症状は、季節の変わり目や夜間・早朝に悪化しやすい特徴があります。
喘息発作の程度は様々で、日常生活に支障がない軽度なものから、会話も困難なほど重い発作まであります。
重症度は、症状の程度や検査結果をふまえ医師が総合的に判断します。
喘息かな?
という症状がありましたら、まずは医療機関で診察を受けましょう。
診察と治療
診察について
喘息が疑われる場合、まず医師が症状の出方や経過について詳しくお聞きします。
「咳が夜にひどくなる」
「季節や環境で悪化しないか」
「ゼーゼー音がするか」
「長引く咳のきっかけ(風邪をひいた後から続いている等)があるか」
また過去のアレルギー歴(アトピー性皮膚炎や花粉症の有無)や家族歴、喫煙歴なども確認します。
検査について
喘息の治療について
喘息治療の目的は、発作を起こさないよう症状をコントロールすることです。
そのため、気道の炎症を抑える長期管理と、万一発作が起きた際に速やかに対処する急性期治療の両面からアプローチします。
長期管理薬(コントローラー):気道の炎症を抑える薬、気管支を拡げる薬、両方の作用がある薬です。症状がなくても毎日使用します。
中心となるのは吸入ステロイド薬で、炎症を抑える効果が高く喘息治療の基本となります。
吸入ステロイド薬はエアゾール式やドライパウダー式の吸入器で毎日決められた回数を吸入し、喉や気管支に直接薬剤を届けます。
吸入薬は少量で肺に作用するため全身的な副作用は少なく、正しく使えば重大な副作用の心配はほとんどありません。
※吸入後、口腔内に薬剤が残ると喉の違和感やカンジダ症(口内のカビ感染)、声がれ等を起こすことがあるため、毎回うがいをする必要があります。
吸入薬以外にも症状、重症度に応じて薬剤を組み合わせます。
- 長時間作用型β₂刺激(LABA):管支を拡げる作用を12時間程度持続する吸入薬で、吸入ステロイドと配合された製剤も多く使われます。
- ロイコトリエン受容体拮抗薬:アレルギーや炎症に関与する物質ロイコトリエンの作用を抑え、気道炎症と収縮を和らげる経口薬です。主に軽症〜中等症で併用されます。
- テオフィリン徐放製剤:気管支拡張作用を持つ経口薬で、ゆっくりと薬効が持続するタイプを就寝前などに内服します。夜間〜早朝の症状予防に使われます。
- 長時間作用性抗コリン薬:気道の副交感神経を遮断して気管支を拡げる吸入薬です。難治性喘息や高齢の喘息(COPD合併例など)で追加されることがあります。
- 抗アレルギー薬:抗ヒスタミン薬や抗IgE抗体製剤(注射薬)など、アレルギー素因が強い場合に用いられます。重症喘息には生物学的製剤(抗体治療)による新しい治療法も登場しています。
- 経口ステロイド薬:重症時に短期間用いることがあります。長期連用は副作用リスクが高いため、吸入薬でコントロールできるよう調整します。
- 短時間作用型β₂刺激薬(SABA):発作治療薬(リリーバー)、発作時に頓用する薬で、狭くなった気管支を素早く拡げて呼吸を楽にします。発作止めに頼りすぎて長期管理薬を怠ると、根本的な炎症が悪化して症状がどんどん悪くなってしまいます。
喘息は継続治療がとても重要です。
自覚症状がなくても気道の炎症は持続しています。症状が落ち着いているからといって自己判断で薬を中断・減量するのは禁物です。
定期的に受診して肺機能のチェックや薬の調整を受けることで、長期にわたり良好なコントロールを維持できます。適切な治療を続ければ発作を予防し日常生活に支障なく過ごすことも可能です。
日常生活の注意点
喘息の治療では、薬物療法に加えて生活環境の整備や生活習慣の見直しも重要です。
日常生活で次のような点に注意することで、発作の誘因を減らし症状悪化の予防が期待できます。
- 住環境の清潔保持:ダニやホコリ、カビは喘息を悪化させます。寝具はこまめに洗濯し、掃除機掛けは定期的に行いましょう。エアコンフィルター掃除も有効です。ペットにアレルギーがある方は、ペットを寝室に入れない・空気清浄機を使う等の工夫をしてください。
- 喫煙しない:喫煙者の方は禁煙を強くおすすめします。ご家族に喫煙者がいる場合、副流煙を吸わないよう換気や分煙に努めましょう。
- 適度な運動と体調管理:適度な運動は肺機能の維持向上に役立ちます。喘息があってもコントロールが良好であれば基本的に運動は可能で、むしろ推奨されます。発作の兆候があるときは激しい運動を避け、運動前には十分な準備運動を行いましょう。
- 規則正しい生活:睡眠不足や過労、精神的ストレスも喘息悪化の誘因となります。できるだけ規則正しい生活リズムを守り、十分な休息とバランスの取れた食事を心掛けましょう。リラックスする時間を持つことも大切です。
- 薬の管理:処方された吸入薬や飲み薬は正しく使用・服用しましょう。不安がある場合は遠慮なく医師に相談してください。また症状が安定していても定期通院は継続し、注意点や治療方針について主治医と確認しておくと安心です。
生活を整えることで、喘息症状のコントロールがさらに良好になります。
完璧に行うのは難しいですが、できることから少しずつ取り入れてみましょう。
ほこりやダニは目に見えないため油断しがちですが、清潔な環境を保つことがとても重要です。
日々の工夫の積み重ねが発作予防につながります。
よくある質問
Q1. 喘息は完治しますか?
A1. 残念ながら完治することは稀です。
喘息は高血圧症や糖尿病のように長期管理が必要な病気だと考えられています。
しかし適切な治療を続けていれば、発作を予防して症状なく過ごすことは可能です。
Q2. 咳喘息と言われましたが、普通の喘息とは何が違うのですか?
A2.異なるのは、咳喘息では喘鳴や明らかな呼吸困難を伴わないこと、痰があまりからまないことです。
夜間〜早朝に発作的な激しい空咳が出る点や、気道が過敏になっていてダニ・ホコリなどアレルゲンが咳の誘因になる点、季節によって症状が悪化しやすい点などは一般的な喘息とよく似ています。
長引く咳でお悩みの方は「ただの風邪」と自己判断せず、一度ご受診いただくことをおすすめします。
Q3. 症状が良くなったので薬をやめてもいいですか?
A3. 自己判断での中止や減薬は避けてください。
たとえ喘息症状が落ち着いていても、気道では慢性的な炎症が続いています。
症状が軽くなったからといって勝手に薬を中断すると、再び悪化して発作が起こるリスクが高まります。
調子が良くなってきた場合でも、「薬を減らせるか」「治療方針を変えるか」は必ず主治医と相談しましょう。
Q4. 吸入ステロイド薬の副作用が心配です。安全に使えるのでしょうか?
A4. 飲み薬のステロイドと異なり、吸入ステロイドはごく微量の薬剤を直接気管支の炎症部分に届けるため、全身への影響はごくわずかです。
適切な用法で毎日続けても、骨粗しょう症や糖尿病など全身性の副作用が問題となることは通常ありません。
現在使用されている範囲の吸入ステロイド治療で重大な副作用が出ることはまれであり、医師の指導のもとで安全に長期使用できます。
一方で、吸入後に薬剤が口の中や喉に付着したままだと、声がかすれる(嗄声)・喉がイガイガする・口内炎や口腔カンジダ症(舌が白くなる)のような局所副作用が起こることがあります。これらは吸入後すぐに水でうがい(ブクブク・ガラガラうがい)をすることでほとんど予防可能です。吸入ステロイドは適切に使えば非常にメリットの大きいお薬ですので、怖がらずにうまく付き合っていきましょう。
Q5. 喘息ですが運動はしない方が良いのでしょうか?
A5. 喘息が適切にコントロールされていれば運動は可能ですし、適度な運動は推奨されています。
注意点もあります。発作を誘発しやすい激しい運動や長時間の運動は控えることです。
ウォーキングやストレッチ、水泳など自分のペースでできる有酸素運動はおすすめです。運動前にはウォーミングアップを行い、冬場はマスクやネックウォーマーで冷たい空気から気道を保護してください。
まとめ
喘息は完治が難しいですが、適切な治療と生活改善により症状をコントロールできる疾患です。
治療をせずに放置すると発作が頻発して症状が悪化し、最悪の場合は生命に関わるような重篤な発作につながることもあります。
喘息と診断されたら「うまく付き合っていけば大丈夫」と前向きに捉え、医師の指導のもと治療と自己管理を続けてください。
早期受診・早期治療をすることで、その後も支障なく生活を続けることが可能です。
千里中央メディカルクリニックでは、呼吸器の専門医が中心となって喘息や長引く咳の診療にあたっています。
初めて喘息の症状で受診される方には、丁寧な問診と必要な検査を行い、状態や重症度を評価したうえで治療内容をご提案いたします。
呼吸機能検査やアレルギー検査も当院で受けていただけますので、レントゲン検査等と併せて総合的に診断し、わかりやすくご説明します。
呼吸器専門医の診療は、水曜日と木曜日の午前のみとなります。
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